ゆるり、のんびり

暮らすように歩き、歩くように暮らす日々の記録

TA DAY40: 名前を呼ぶと愛おしい 愛がある場所は心地よい

今日は21㎞歩き、今はKauri Laneという場所にいる。

今夜はここのお庭でキャンプさせてもらう。

この場所はとても美しく、何日でも滞在したい気持ちになる。

見晴らしの良いお庭。

オーナーさんの好きが集まっているのかなと思うインテリアたち。

勝手口のコンクリートには石やタイルの破片が埋め込まれ猫やお花のようにも見える。

そんなちょっとした遊び心。

こんなに美しい所で毎日の生活ができたらどんなに楽しいだろうか。

 

 

15時ごろここに着いてオーナーご夫妻と弟さんに会い、

シャワーを浴びて、洗濯をして、緑茶を飲みながらこの日記を書いている。

 

 

今朝は怖い夢を見て目覚めは最悪だった。

朝食はインスタントのスープにオートミールを入れてみた。

とってもおいしい。

でもやっぱり甘々なオートミールが食べたくなる。

 

出発前にカフェのそばにある公衆トイレに行く。

ここの公衆トイレは日本の新幹線の多目的トイレのような構造で、

全自動であり一人だけが利用できるようになっている。

外にある「開く」のボタンを押すと扉が自動で開き、

そこからトイレがしゃべりだす。

「ボタンを押してドアを閉めてください。」

と言われ、その通りにすると今度はリラックスできそうな音楽が流れる。

すごく快適な一人空間。

しかし、長く滞在しすぎると今度は急かされる。

「利用時間が長すぎます。用が済んだら外に出てください。」

みたいなことを繰り返し言われる。

こちらも好きで長く利用しているわけではない。

人間にはお腹が痛くなることがあり、

機械には理解できないぐらい長くトイレに籠ってしまうこともあるのだ。

全自動なので、このまま時間切れで扉が開いてしまうのでは、

とひやひやするぐらい急かされるが、さすがにそんなことはないらしい。

自動で出てくる水と石鹸で手を洗い、「開く」のボタンを押して外に出る。

最後は「サンキュー」みたいなことを言われた。

 

8時に歩き始める。

朝のWaikato River(ワイカトリバー)は鏡のようだった。

 

今日はずっとStopbank(土手)とロード歩きの一日。

少しかかとが痛いのが心配だけど、多分大丈夫だろう。

 

土手を歩きながらいくつもの牧場の横を通りすぎる。

これまでこの国を旅をしてきて、人より動物に出会うことの方が多い。

牧場でオーナーさんが何かしているところをまだ見たことがない。

 

土手の途中でフェンスの外に出てしまっている子牛に出会った。

 

まだ体が小さいから逃げてしまったのだろうか。

少し距離を取って子牛の横を通り過ぎる。

すると子牛がわたしたちの後をついて来た。

どこまでもついてくる。

「一緒に旅をするか?」なんて話しかけていると、

こちらの言葉を理解しているのか、

小走りで近寄ってくる。

この子牛を「ロシナンテ」と名付けた(勝手に)。

シカ曰く、ドン・キホーテが乗っている馬の名前らしい。

ドン・キホーテの物語はよく知らないけれど、かわいい名前だと思った。

ロシナンテロシナンテ

そう呼んでいるうちに子牛への愛情がどんどん深まっていく。

 

本当にこのまま一緒に旅ができたらいいのに。

そう思って歩いていたけれど、10分ほど歩いた先にスタイルがあり、

ロシナンテはそれを乗り越えることはできず、ここでお別れとなった。

 

「家族の元へ帰るんだよ」と心の中でつぶやき、

時々振り返ってロシナンテの姿を確認しながら歩く。

しばらくすると、もうロシナンテの姿は見えなくなってしまった。

 

スタイルを越えたところはたくさんの木が植わっているゴルフ場だった。

気持ちよさそうな木陰を見つけ、座って休憩。

おやつのバーを食べる。

 

 

歩きながら何気ない話をしていると、

またどこからかネガティブさんがやってきてわたしの心の中に居座る。

どんより。

 

ロングトレイルを歩き始め、今日までたくさんの人に出会った。

その度に思うのは、みんなのように「わたしはこれができる」と言えるものが自分にはない。

中身のないペラペラ人間で自分のことが嫌になってばかりだ。

実際今のわたしは何もできない。

歩くことさえままならないのだ。

 

 

 

 

どんよりしてしまったけれど、

トルティーヤを食べ、この美しい庭でゆっくりしていたら

そんなことどうでもよくなった。

どうでもよくなるぐらいこの場所は美しい。

洗濯を干しながら暖かくまぶしい太陽の光を浴び、

Tui(トゥイ)に似たBell Bird(ベルバード)の美しい鳴き声を聞く。

それがとても心地よい。

 

 

今できることは何もなく、

失うものも何もないのだから、

当たって砕けろ精神でもっと積極的になろうと思う。

 

ああ、本当に美しくていいところだ。

明日も晴れますように。

 

 

 

DAY40 Rangiriri - Kauri Lane 25㎞ (765km/3000km)