ゆるり、のんびり

暮らすように歩き、歩くように暮らす日々の記録

余白と深呼吸

それが今年2024年のテーマに決まった。

 

ちなみに去年のテーマは「淡々と生きる」だった。

昨年から急に始まった、テーマを決めて生きる一年。

このテーマは自分の頭の中で絞り出すものではなく、偶然的に出会った言葉をテーマとしている。

 

2023年は1月が始まってから、やけに「淡々と」という言葉に出会った。

占いだったり、SNS上だったり、読んでいる本だったり。

一度では終わらない、この言葉との出会いが偶然的に重なって、淡々と生きてみようと一年のテーマを決めたのである。

 

たくさんの言葉がある中で、「淡々と」という言葉が何度も飛び込んできたということは、無意識に自分がそんな生き方を求めていたのかもしれない。

 

そして今年もテーマを決めようと思っていたわけではなく、これまた出会ってしまったという感覚で、2024年は「余白」と「深呼吸」という言葉がいろいろな方面から飛び込んできた。

 

思い返せばここ7、8年ぐらいずーっと何かを目指して突っ走ってきた気がする。

余白と深呼吸を意識しだしてから、こんなに自分を追い込む必要があるのだろうか?と、少し立ち止まって考えるようになった。

 

今の生活やこれからの未来で大変だと感じるところは思い切って手放し、安心できる場所でゆっくり深呼吸して過ごす時間が今の自分には必要なように感じる。

 

新しいものが入ってくる余白を用意して。

深呼吸のあとに新鮮な空気を思いっきり吸い込んで。

 

 

 

深呼吸をしてもなかなか眠りにつけないので、久しぶりに文章を書いた。

 

書くこともまた、頭の中にあるものを外に吐き出すこと。

 

 

ようやく眠くなってきた。

おやすみなさい。

TA DAY43: ちゃんと背負っておく

目覚める。

ここのバックパッカーはなんと朝食食べ放題。

大盛食べて、ハミルトンの街を出発。

 

平坦な街の中心部から坂道を上って郊外へ。

病院の大きな建物がいくつもある。

ルート上に大きなスーパーがあったので食料調達。

9日分の食料を背負うのは久しぶりだ。

 

スーパーの横にドラッグストアがあったので、

店の外にザックを置いて中に入る。

オークランドでJさんにもらった足に塗る軟膏が少なくなっていたので、

新しいものを買うためだ。

店内をうろうろしていると、店員さんに声をかけられた。

 

「店の外にあるザックはあなたたちの?」

そうだと答えると、店員さんは続けてこう言った。

「誰かに荷物を取られてしまうかもしれないから、

ちゃんと背負っておきなさい。」

 

 

これまでも買い物をする時はたいていザックを店の外に置いていた。

ニュージーランドのスーパーは日本と比べ通路が広いけれど、

60リットルのザックを背負うとさすがに邪魔になってしまう。

なので、貴重品だけを持って買い物をするようにしていたのだが、

「誰かに取られてしまうかも」と言われたのはこの地域が初めてだった。

 

店員さんにお礼を言って、ザックを背負い店内に戻る。

荷物と一体の体ではそーっと歩かないと商品を落としてしまいそうになる。

お目当ての軟膏を見つけ、お会計をして店の外に出た。

 

店員さんの言葉を思い出す。

今までは日本にいる時のように安心しきっていたけれど、

急に「外国にいるんだ」と自覚し、少し緊張する。

 

 

しばらく道を歩き、牧場のエリアに入った。

人の気配が無くなり、少しほっとする。

 

牧場の入り口付近にTAハイカー用の小さな標識があった。

ゴールのブラフ(BLUFF)までたったの2200キロ!

近いんだか遠いんだかよくわからない。

けれど、ここまで歩いた800キロのおかげか、

この先の距離を見て途方に暮れる感覚はもうない。

 

 

牛の牧場やシカの牧場の横を歩いていく。

初めて見るシカの牧場。

一匹の強そうな角を持つシカの周りに角のないシカたちがいて、

みんなで行動しているように見える。

 

 


道の途中で北欧から来たTAハイカーのカップルに出会う。

とても気さくで明るいCちゃんと静かで優しいOくん。

少し話をして二人は先へ進んだ。

 

暗くなってきたので牧場より少し高台の場所でキャンプをすることにした。

動物たちはいないが、フンはたくさん落ちている。

少し雨が降ってきた。

フンの成分が入った水がテントの中に入ることはできれば避けたい。

なるべくフンが少なく、水の流れがなさそうな場所を選びテントを張った。

 

 

今日の学び。

牧場にフンのないところはない。

 

DAY43  Backpackers Central Hamilton - どこかの牧場 26㎞ (826km/3000km) 

鳥たちはミタ

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも必ず誰かが見に来ます。

どんな話をしているのかな。

 

ニュージーランドの森は鳥たちの楽園みたいなところです。

鳥を主人公にしたマンガも描きたいなぁ。

 

 

TA DAY42: 今はインドカレー

朝、Sさんのお家を出発し、Jくんと3人で歩き出す。

通勤時間だからか車がたくさん走っている。

次の街ハミルトン(Hamilton)まで10キロほど。

ハミルトンでは食料だけ調達して先に進もうと計画した。

住宅街を抜け、川沿いの遊歩道を歩く。

 


しかし、しばらくすると足が痛くなってきた。

痛みが出てくると速く歩けない。

Jくんも同じペースで歩いてくれていたが、

こんなペースに付き合ってもらうのは申し訳ないので、

素直に事情を伝え、ここで別れることにした。

今日はハミルトンの街でゆっくり休もう。

 

 

 

 

緑の印象が強かった遊歩道から建物の多いハミルトンの街へ。

メインストリートには何でもそろっていて、便利そう。

 

インドカレー屋さんを見つけ、そこでランチをする。

そしてわたしはいつものごとくバターチキンカレーを注文した。

やっぱりうまい!

 

なかなか宿が見つからず、たくさん歩いてふらふらに。

街に着いて一気に気が抜けた。

 

ようやく見つけたバックパッカーでチェックインを済ませ、

シャワーを浴び、ドミトリーのベッドに寝転ぶ。

部屋の白い天井をぼーっと見つめ、しばらくごろごろする。

窓の外ではたくさんの車の音が。

街が動いている時間にごろごろできるなんて幸せだ。

すっかり元気になった。

 

寝転びながら家族に連絡をしたり、

ネットサーフィンしていると、日本人ハイカーのAさんから連絡が入った。

ハミルトンにいるらしく、夕食に誘ってくれた。

 

ベトナム料理屋さんで待ち合わせ。

トレイルやこれまでの日本での暮らし、色々な話をした。

こんなに日本語を話すのは久しぶり。

 

そしてまたもや荷物の話になった。

Aさんはバウンスボックスを利用して

自分の荷物を主要な町に送っているそうだ。

 

「2人はバウンスボックスやらないの?」

とAさんに聞かれ、

「荷物を軽くするより、今はインドカレーを食べたいんです。」

と答えた。

 

はっきりとしたバウンスボックスの送料は忘れてしまったが、

1回あたりの送料は大人2人がインドカレー屋さんでお腹いっぱい食べられるぐらいの値段だったと思う。

お金を出して軽さをとるか、重さとインドカレーをとるか。

考えさせられる。

軽くなれば疲労や足の痛みも楽になるだろうというのはわかっている。

けれど、これまでも荷物を減らしてきたし、背負えない重さではない。

やっぱり今はインドカレーだ。

 

 

ベトナム料理だけではお腹いっぱいにならず、

店を出た後、サンドイッチとドーナツを買って食べた。

今日は贅沢!

 

 

DAY42  Sさんのお家 - Backpackers Central Hamilton11㎞ (800km/3000km) 

 

 

バウンスボックスについて書いている日記↓

kamoshikahiking.hatenablog.com

 

TA DAY41: 明るい森 茹でないブロッコリー

鳥たちが一斉に鳴きだした声で目が覚める。

まだ外は暗く、テントの中は何も見えない。

これから昇ってくる朝日を心待ちに皆それぞれの歌を歌っているのだろうか。

明るくなるまで鳥たちのコーラスを聴きながら眠りの余韻に浸る。

 

 

朝食はKauri Laneのオーナーさんからいただいた

ヒルの卵をいただく。

ゲスト用のキッチンをお借りして、

熱したフライパンにじゅわっと卵を落とす。

しばらく焼いてひっくり返し、

両面をしっかり焼いたアヒルの目玉焼きが完成。

人生初のアヒルの卵。ドキドキ。

弾力があるけれど味はあっさりしている。

これはおいしい。

朝から豪華な朝食。ありがたい。

昨日夕方に到着し、一緒に泊まっていたTAハイカーのJくんはゆっくり起きてきた。

わたしたちは先に出発する。

 

 

森に入る。

今まで歩いて来た森と違ってとても歩きやすい。

いい森だ。

 

ある程度標高が上がると、木々は細めで真っすぐなものが多い。

幹はつるつるして横線が入っているトロピカル風な木を見るのは初めて。

今までのトロピカルな木々たちはみんな幹もふさふさだった。

恐竜時代の絵に出てきそうな雰囲気の森。

 

 

よく光が入るので明るく、歩いていると自然と笑顔になる。

 

 

後ろから足音が聞こえ、振り返るとJくんが走ってきた。

裸だ。

アラスカ出身の彼にはこの気温は暑すぎるのかもしれない。

気持ちがいいから走っていくという。

Jくんもウルトラライトの世界の人で、

バックパックはランドセルのよう。

わたしも荷物が軽ければ走っていたと思う。

 

 

この森の山頂付近はとても眺めがよかった。

イカト地方を見下ろすことができる。

大きな川と牧場があり、少し遠くには街も見える。

 

 

展望台もあるようだったが、そこには登らず、

ひたすら長い階段を下りていく。

 

 

山を下りきったところでJくんがいた。

スナックを食べて休憩している。

もうTシャツを着ていた。

 

今日はこれからトレイルエンジェルさんのお家でキャンプをさせてもらうとのこと。

一緒に行くか?と誘ってくれた。

今の時間は14時、ここからさらに15キロ。

いける!と思い、Jくんと歩くことになった。

トレイルエンジェルさんのお家までの道を地元の人に聞いてくれるJくん。

 

 

途中にスーパーがあったので食料を調達した。

Jくんはブロッコリーを買っていた。

そして、店を出るとJくんはリュックに食料をしまい、ブロッコリーだけを手に持つ。

まるで小さなブーケを持つように。

どうするのだろうと不思議に思っていたら、ポリポリと歩きながら食べ始めた。

わたしの中ではブロッコリーは茹でるものだったので、驚いた。

「食べる?」

じーっと見ていたことに気づいてJくんがそう言ってくれた。

食べてみる。

ポリポリポリポリ。

少しかたいのでたくさん噛む。

するとふわぁっとブロッコリーの甘さが口の中に広がる。

「おいしい!!」

驚きと感動で声が大きくなってしまった。

ブロッコリーを食べて甘いと感じたことは今までなかった。

「茹でなければいけない」と思っていたわたしの世界に新しい光が入る。

なければいけないことなんてない。

 

 

 

いける!と思って一緒に歩いて来たけれど、

途中で足が痛み、Jくんにも迷惑をかけてしまった。

無理は禁物。

自分のペースで歩くようにしないと。

 

なんとか無事にトレイルエンジェルさんのお家に到着。

空は少し薄暗くなっていた。

今日おじゃましたのはSさんご家族のお宅。

きれいな芝生のお庭にテントを張らせてもらう。

 

今日の夕食はBBQなので一緒にどうかと誘っていただく。

いいのだろうか、とドキドキしてしまったけれど、

ありがたくご一緒させていただくことに。

 

「飲み物は何がいい?お水?炭酸水?コーラもあるよ。」

お母さんにそう聞かれて「お水をください。」と言った。

Jくんは「炭酸水がいいな。」と言った。

本当はわたしもシュワっといきたかったのだけれど、

言えなかった。

 

Sさんご家族と一緒にお庭でBBQ。

ニュージーランドのBBQは分厚いお肉がドーン!

太いソーセージがゴロゴロゴロ!

さすが牧場大国。

薄ーくスライスしたお肉をせっせと裏返して焼く母国のBBQとは全く違うものだった。

ソーセージ2本でお腹いっぱい。

 

「これ、プレゼント。」

そう言ってお母さんはわたしたち3人にオレンジ色のものをくれた。

トレイル上でルートの目印に使われている三角形のオレンジマーク。

その形をした手作りワッペンだった。

 

聞くとSさんの息子さんは去年TAを歩いたそうだ。

そして今はTAハイカーにキャンプする場所を提供してくれている。

リビングには息子さんの旅程を記録したボードと少しの写真があり、

この先のルートのことを色々と教えてくれた。

 

順番にシャワーをお借りした。

最後に入ったJくんが出てきたところで

「お水か炭酸水、飲む?」とお母さんが聞いてくれた。

「じゃあ炭酸水を。」とJくんが言った。

わたしも炭酸水をいただいた。

 

Sさんご家族の優しさにふれ、うるっとすることが何度もあった。

なぜこんなにも優しいのだろう。

どうすれば感謝の気持ちを伝えられるのだろう。

英語でうまく表現できないのもあるけれど、

いただいた優しさを前にした時、わたしはどうしたらいいのだろう。

 

 

DAY41 Kauri Lane - Sさんのお家 24㎞ (789km/3000km) 

TA DAY40: 名前を呼ぶと愛おしい 愛がある場所は心地よい

今日は21㎞歩き、今はKauri Laneという場所にいる。

今夜はここのお庭でキャンプさせてもらう。

この場所はとても美しく、何日でも滞在したい気持ちになる。

見晴らしの良いお庭。

オーナーさんの好きが集まっているのかなと思うインテリアたち。

勝手口のコンクリートには石やタイルの破片が埋め込まれ猫やお花のようにも見える。

そんなちょっとした遊び心。

こんなに美しい所で毎日の生活ができたらどんなに楽しいだろうか。

 

 

15時ごろここに着いてオーナーご夫妻と弟さんに会い、

シャワーを浴びて、洗濯をして、緑茶を飲みながらこの日記を書いている。

 

 

今朝は怖い夢を見て目覚めは最悪だった。

朝食はインスタントのスープにオートミールを入れてみた。

とってもおいしい。

でもやっぱり甘々なオートミールが食べたくなる。

 

出発前にカフェのそばにある公衆トイレに行く。

ここの公衆トイレは日本の新幹線の多目的トイレのような構造で、

全自動であり一人だけが利用できるようになっている。

外にある「開く」のボタンを押すと扉が自動で開き、

そこからトイレがしゃべりだす。

「ボタンを押してドアを閉めてください。」

と言われ、その通りにすると今度はリラックスできそうな音楽が流れる。

すごく快適な一人空間。

しかし、長く滞在しすぎると今度は急かされる。

「利用時間が長すぎます。用が済んだら外に出てください。」

みたいなことを繰り返し言われる。

こちらも好きで長く利用しているわけではない。

人間にはお腹が痛くなることがあり、

機械には理解できないぐらい長くトイレに籠ってしまうこともあるのだ。

全自動なので、このまま時間切れで扉が開いてしまうのでは、

とひやひやするぐらい急かされるが、さすがにそんなことはないらしい。

自動で出てくる水と石鹸で手を洗い、「開く」のボタンを押して外に出る。

最後は「サンキュー」みたいなことを言われた。

 

8時に歩き始める。

朝のWaikato River(ワイカトリバー)は鏡のようだった。

 

今日はずっとStopbank(土手)とロード歩きの一日。

少しかかとが痛いのが心配だけど、多分大丈夫だろう。

 

土手を歩きながらいくつもの牧場の横を通りすぎる。

これまでこの国を旅をしてきて、人より動物に出会うことの方が多い。

牧場でオーナーさんが何かしているところをまだ見たことがない。

 

土手の途中でフェンスの外に出てしまっている子牛に出会った。

 

まだ体が小さいから逃げてしまったのだろうか。

少し距離を取って子牛の横を通り過ぎる。

すると子牛がわたしたちの後をついて来た。

どこまでもついてくる。

「一緒に旅をするか?」なんて話しかけていると、

こちらの言葉を理解しているのか、

小走りで近寄ってくる。

この子牛を「ロシナンテ」と名付けた(勝手に)。

シカ曰く、ドン・キホーテが乗っている馬の名前らしい。

ドン・キホーテの物語はよく知らないけれど、かわいい名前だと思った。

ロシナンテロシナンテ

そう呼んでいるうちに子牛への愛情がどんどん深まっていく。

 

本当にこのまま一緒に旅ができたらいいのに。

そう思って歩いていたけれど、10分ほど歩いた先にスタイルがあり、

ロシナンテはそれを乗り越えることはできず、ここでお別れとなった。

 

「家族の元へ帰るんだよ」と心の中でつぶやき、

時々振り返ってロシナンテの姿を確認しながら歩く。

しばらくすると、もうロシナンテの姿は見えなくなってしまった。

 

スタイルを越えたところはたくさんの木が植わっているゴルフ場だった。

気持ちよさそうな木陰を見つけ、座って休憩。

おやつのバーを食べる。

 

 

歩きながら何気ない話をしていると、

またどこからかネガティブさんがやってきてわたしの心の中に居座る。

どんより。

 

ロングトレイルを歩き始め、今日までたくさんの人に出会った。

その度に思うのは、みんなのように「わたしはこれができる」と言えるものが自分にはない。

中身のないペラペラ人間で自分のことが嫌になってばかりだ。

実際今のわたしは何もできない。

歩くことさえままならないのだ。

 

 

 

 

どんよりしてしまったけれど、

トルティーヤを食べ、この美しい庭でゆっくりしていたら

そんなことどうでもよくなった。

どうでもよくなるぐらいこの場所は美しい。

洗濯を干しながら暖かくまぶしい太陽の光を浴び、

Tui(トゥイ)に似たBell Bird(ベルバード)の美しい鳴き声を聞く。

それがとても心地よい。

 

 

今できることは何もなく、

失うものも何もないのだから、

当たって砕けろ精神でもっと積極的になろうと思う。

 

ああ、本当に美しくていいところだ。

明日も晴れますように。

 

 

 

DAY40 Rangiriri - Kauri Lane 25㎞ (765km/3000km) 

 

本の森を歩く vol.5

太平洋側はよく晴れています。

本の森を歩く。

 

さて、今日は「本の森を歩く」シリーズを始めるきっかけをくれた本のお話です。

 

日常的にテレビを見ない生活になり早7年。

芸能人と呼ばれる人たちの最新情報は7年前で止まっている。

ネットニュースを見ると知らない名前がこんなにも増えたのかと思う。

 

それが今年、あるテレビ番組のある言葉を聞いて衝撃が走った。

 

「白って200色あんねん。」

 

そう、アンミカさんである。

このたった13音の中にこれほどまでの破壊力を込められる人はいるのだろうか。

 

アンミカさんのことは知っていた。

テレビと暮らしていた時代も何度か画面上でお見かけしたことがあったように思う。

けれど、今ほどたくさんのテレビに出演されていた記憶はあまりなく、

わたしの中ではモデルさんというイメージが強かったので、

関西弁を話す方だというのもこの時初めて知った。

 

「白って200色あんねん。」

の衝撃を受けてから、

「ずっと考えているわけではないけれどどこか気になる存在」として

アンミカさんはわたしの中に滞在して下さっていた。

(尊敬するぐらいおもしろいから変な敬語になってしまう。)

 

 

以前「本の森を歩くvol.2」で紹介した

南海キャンディーズ山ちゃんのエッセイが想像以上におもしろかったので、

芸能人の本をもっと読んでみようかなと思っていた。

 

そんな時、わたしの中のどこか気になる存在部屋から

パーッと光を放ちながら扉を開けて登場されたのがアンミカさんだった。

 

 

いつものごとく急いで図書館で蔵書があるか調べる。

あった。アンミカさんの本は2冊ある。

早速予約をして、後日取りに行った。

「あの、予約した本があるんですけど・・・。」

と司書さんに伝えると、

「あ!アンミカさんの本ですね!」

と言われ少し照れる。

なぜなら同時に2冊もアンミカさんの本を借りたということと、

わたしのようなポテトガール(もうガールじゃない年齢か)が

美しいモデルさんの本を借りるという事に少しドキドキしていたのだ。

 

手元にやってきた2冊の本には

アンミカさんのアップのお顔と美しい立ち姿がそれぞれ表紙にバーン。

 

書店や図書館でたまたま見たとしても

この本は手に取らなかった取れなかっただろうと思うほど。

 

そんなポテトガールが影響を受けたのが、

「幸せの選択力~愛・幸・運に恵まれた人生を手に入れる~」

というタイトルの本だった。

 

このタイトルを見ると余計に自分では手に取れなかっただろうと思う。

こんな人生を手に入れたい!という意気込みもなく、

ただ何となく川の流れのように生きているポテトガールと

アンミカさんの本を出会わせてくれた200色の白には感謝している。

 

 

その人が「これは楽しいから、人に広めたい」と思って社会と手をつないだ瞬間、その趣味はこの世における役割に変化する。

それぞれのワクワクを持ち寄り、自分にふさわしい場でこの世における役割を果たす。

 

わたしにとってのワクワクはなんだろう。

読書家と名乗れるほど本を読んではいないし、詳しくないけれど、

本を読むことは好きだ。

そして本を読むことよりも、「本のある空間」にいることが好きで、

小学生の頃から図書館や本屋さんによく通っていた。

 

そんなわけで、ブログという社会と手をつなげる場所で、

気に入った本を紹介してみようと思った。

 

 

 

昔、とある古本屋さんで一日店長をさせてもらったことがある。

その日店長さんはどうしても用事があり店を開けられないということで、

わたしに声がかかったのだった。

店長と言ってもわたしが特別何かをするわけではなく、

薪ストーブで部屋を暖め、お客さんが来るのを待って、

お客さんが来たら対応して、時々火のお世話をするという一日。

お客さんの対応と言っても当時は今よりも本を読んでいなかったので、

本のお話を聞いても

「そうなんですか~。」と相槌を打つことぐらいしかできなかった。

それでも本というものを通して人とつながる時間は

わたしにとってとても心地のいいものだった。

 

店長さんからは事前に常連さんのお話を聞いていて、

「この人が来たらカレーを出してね。

あの人が来たらコーヒー、あの子には紅茶で作るチャイを。」

とサービスのカレーやドリンクの作り方を聞いていた。

 

ご近所さん付き合いの延長線上にあるその古本屋さんには

わたしが店番をしていた日も常連さん(ご近所さん)たちが来てくれて、

みんなでカレーを食べ、お茶を飲んで、

本を見て、本の話をして帰っていった。

 

 

もう何年も前のことだけれど、その一日がとても楽しかったのだった。

そのことを思い出し、また誰かと本の話をしたくなった。

 

自分が好きになった本のことを「ねぇねぇ聞いて!」と家族や友人に話すように。

「一冊の本とわたしのストーリー」をここに書き残すことで、

もしも世界のどこかの誰かと手をつなぐことができるのなら。