ゆるり、のんびり

暮らすように歩き、歩くように暮らす日々の記録

TA DAY41: 明るい森 茹でないブロッコリー

鳥たちが一斉に鳴きだした声で目が覚める。

まだ外は暗く、テントの中は何も見えない。

これから昇ってくる朝日を心待ちに皆それぞれの歌を歌っているのだろうか。

明るくなるまで鳥たちのコーラスを聴きながら眠りの余韻に浸る。

 

 

朝食はKauri Laneのオーナーさんからいただいた

ヒルの卵をいただく。

ゲスト用のキッチンをお借りして、

熱したフライパンにじゅわっと卵を落とす。

しばらく焼いてひっくり返し、

両面をしっかり焼いたアヒルの目玉焼きが完成。

人生初のアヒルの卵。ドキドキ。

弾力があるけれど味はあっさりしている。

これはおいしい。

朝から豪華な朝食。ありがたい。

昨日夕方に到着し、一緒に泊まっていたTAハイカーのJくんはゆっくり起きてきた。

わたしたちは先に出発する。

 

 

森に入る。

今まで歩いて来た森と違ってとても歩きやすい。

いい森だ。

 

ある程度標高が上がると、木々は細めで真っすぐなものが多い。

幹はつるつるして横線が入っているトロピカル風な木を見るのは初めて。

今までのトロピカルな木々たちはみんな幹もふさふさだった。

恐竜時代の絵に出てきそうな雰囲気の森。

 

 

よく光が入るので明るく、歩いていると自然と笑顔になる。

 

 

後ろから足音が聞こえ、振り返るとJくんが走ってきた。

裸だ。

アラスカ出身の彼にはこの気温は暑すぎるのかもしれない。

気持ちがいいから走っていくという。

Jくんもウルトラライトの世界の人で、

バックパックはランドセルのよう。

わたしも荷物が軽ければ走っていたと思う。

 

 

この森の山頂付近はとても眺めがよかった。

イカト地方を見下ろすことができる。

大きな川と牧場があり、少し遠くには街も見える。

 

 

展望台もあるようだったが、そこには登らず、

ひたすら長い階段を下りていく。

 

 

山を下りきったところでJくんがいた。

スナックを食べて休憩している。

もうTシャツを着ていた。

 

今日はこれからトレイルエンジェルさんのお家でキャンプをさせてもらうとのこと。

一緒に行くか?と誘ってくれた。

今の時間は14時、ここからさらに15キロ。

いける!と思い、Jくんと歩くことになった。

トレイルエンジェルさんのお家までの道を地元の人に聞いてくれるJくん。

 

 

途中にスーパーがあったので食料を調達した。

Jくんはブロッコリーを買っていた。

そして、店を出るとJくんはリュックに食料をしまい、ブロッコリーだけを手に持つ。

まるで小さなブーケを持つように。

どうするのだろうと不思議に思っていたら、ポリポリと歩きながら食べ始めた。

わたしの中ではブロッコリーは茹でるものだったので、驚いた。

「食べる?」

じーっと見ていたことに気づいてJくんがそう言ってくれた。

食べてみる。

ポリポリポリポリ。

少しかたいのでたくさん噛む。

するとふわぁっとブロッコリーの甘さが口の中に広がる。

「おいしい!!」

驚きと感動で声が大きくなってしまった。

ブロッコリーを食べて甘いと感じたことは今までなかった。

「茹でなければいけない」と思っていたわたしの世界に新しい光が入る。

なければいけないことなんてない。

 

 

 

いける!と思って一緒に歩いて来たけれど、

途中で足が痛み、Jくんにも迷惑をかけてしまった。

無理は禁物。

自分のペースで歩くようにしないと。

 

なんとか無事にトレイルエンジェルさんのお家に到着。

空は少し薄暗くなっていた。

今日おじゃましたのはSさんご家族のお宅。

きれいな芝生のお庭にテントを張らせてもらう。

 

今日の夕食はBBQなので一緒にどうかと誘っていただく。

いいのだろうか、とドキドキしてしまったけれど、

ありがたくご一緒させていただくことに。

 

「飲み物は何がいい?お水?炭酸水?コーラもあるよ。」

お母さんにそう聞かれて「お水をください。」と言った。

Jくんは「炭酸水がいいな。」と言った。

本当はわたしもシュワっといきたかったのだけれど、

言えなかった。

 

Sさんご家族と一緒にお庭でBBQ。

ニュージーランドのBBQは分厚いお肉がドーン!

太いソーセージがゴロゴロゴロ!

さすが牧場大国。

薄ーくスライスしたお肉をせっせと裏返して焼く母国のBBQとは全く違うものだった。

ソーセージ2本でお腹いっぱい。

 

「これ、プレゼント。」

そう言ってお母さんはわたしたち3人にオレンジ色のものをくれた。

トレイル上でルートの目印に使われている三角形のオレンジマーク。

その形をした手作りワッペンだった。

 

聞くとSさんの息子さんは去年TAを歩いたそうだ。

そして今はTAハイカーにキャンプする場所を提供してくれている。

リビングには息子さんの旅程を記録したボードと少しの写真があり、

この先のルートのことを色々と教えてくれた。

 

順番にシャワーをお借りした。

最後に入ったJくんが出てきたところで

「お水か炭酸水、飲む?」とお母さんが聞いてくれた。

「じゃあ炭酸水を。」とJくんが言った。

わたしも炭酸水をいただいた。

 

Sさんご家族の優しさにふれ、うるっとすることが何度もあった。

なぜこんなにも優しいのだろう。

どうすれば感謝の気持ちを伝えられるのだろう。

英語でうまく表現できないのもあるけれど、

いただいた優しさを前にした時、わたしはどうしたらいいのだろう。

 

 

DAY41 Kauri Lane - Sさんのお家 24㎞ (789km/3000km)