出発の日
ある年の10月、いよいよ私たちはTe Araroaの旅に出発する。
この日はとても天気のいい穏やかな気候だった。
前日までニュージーランドへ旅立つ実感もわかず、
家を出る時も普段仕事に行く時と同じように「いってきまーす」と言って出かけた。
この旅のために買ったまだ背負いなれていない60Lのバックパックを背負って、見送りに来てくれる母と一緒に電車に乗った。
空港に到着するとSHIKAの家族も到着していた。
そしてなんとそれぞれの友人も遠路はるばる空港まで見送りに来てくれていた。
荷物のチェックインを済ませ、家族や友人たちとの会話を楽しむ。
みんなで記念撮影をしたり、なんだかエベレストを登りに行く人達のような待遇?でちょっと照れ臭かったけど、とても楽しかったからこのまま空港にいてもいいな~と思った。
楽しい時間はあっという間で、搭乗の時間になってしまった。
ゲートまでみんなが見送りに来てくれて、見えなくなるまで手を振り、飛行機に乗った。
ここまで来ても旅が始まる実感がまだわかなかった。
飛行機が離陸した。
ふわっと体が浮いた時、旅が始まる実感が少しだけわいた。
見送りに来てくれた家族や友人、私たちの旅を応援してくれる人たちの顔を思い浮かべながら、無事に3000km歩き切ろうと心に誓った。
わくわくしている私とは反対に、先ほどまで笑顔でみんなと話していたSHIKAの表情が少し曇っている。
なんと、いきなりの体調不良。
歩くことを決めるまで
ロングトレイルを歩くことはさらっと決めたけれども、
アウトドア人間ではない私がなぜ歩こうと思ったのか。
本当の始まりはいつなのか?
それは小学生時代まで遡る。
(KAMOSHIKA HIKINGにちなんでここから私のことはKAMOと呼んでみます。)
小学生の時にアニメ「アルプスの少女ハイジ」と出会い、衝撃が走る。
藁のベッドで眠り、ヤギの世話をし、おいしいものを食べ、自然の美しさに感動しながら、1日が終わる。
「こんな暮らしがしたい。わたしは将来ハイジになろう。」と心に決めて、
いつか旅に出ることを夢見ながら小中高校生を過ごした。
あまり読書は好きではなかったが、ふと手に取った旅の本をきっかけに、
自転車や歩いて旅をする本や映画に没頭するようになる。
バスや電車での旅ではなく、自分の足で旅することに憧れるようになる。
学校の先生やアルバイト先に旅の先輩となる人たちがいて、
カモが旅に憧れていることを自分から話した覚えはないのだが、
先輩たちから旅の話をたくさん教えてもらったのも自分にとっては大きなきっかけだったと思う。
その後、急に世界を目指し始めたり、日本の生活も面白くなってきたり、紆余曲折あって時が過ぎ。
このまま旅をせず日本で過ごすのもありかな~とも考えていたところ、
自分の足で旅ができるロングトレイルの誘いによって、再び旅への情熱が燃えだしたのだった。
日帰りの山登りに1度行っただけの経験値で歩くことを決意してしまったKAMOであった。
一方、パートナー(ここではカモシカのSHIKAと呼ぼう)がロングトレイルに出会うまではどうだったのか。
いつからか山に登り始め、山登りが大好きになる。
そんな時、ある雑誌の中にニュージーランドのロングトレイルTe Araroaの記事があり、SHIKAの中で衝撃が走る。(カモシカには衝撃走りやすいのだろうか?)
そこにはニュージーランドの美しい森やトレイルの写真があった。
こんな美しい自然があるのか!!この自然にどっぷり浸りたい!!
そしてSHIKAの中で「Te Araroaを歩く」という目標ができる。
歩くことに迷いもあったそうだが、歩かないと後悔すると思い決心した。
その前に日本アルプスを歩こうと考え、太平洋海抜0mから日本海海抜0mまでを山道を結んで歩く旅をした。1か月とちょっとかかった。
そしてニュージーランドへの準備を進める中、
せっかく歩くなら2人のほうがおもろそう!ということで、
私KAMOがいざなわれ、KAMOSHIKA HIKINGのTe Araroaの旅がスタートすることとなった。
*******
前置きが長くなりましたが次回からはいよいよ日本を旅立ちます!
(これがまた長い・・・苦笑)
始まりはお好み焼きとともに
旅の始まりはいつも決まって突然にやってくる。
始まろうとしている合図と同時にスタートできる準備ができているかどうか。
少し遅れても、少し早くても、その時々で全く違った旅になるのだと思う。
ロングトレイルという長い旅へのスタートもある日突然やってきた。
何週間、何か月もかけて歩くロングトレイルという世界は私にとって関係のない世界だと思っていた。
山登りの経験もなく、アウトドアがたまらなく好きなわけでもない。
たまに自然の中に行くことは好きだけど、街の中で暮らしていくことも楽しい。
残念なことに運動神経はとても悪い。
そんなわけでパートナーがロングトレイルを歩くからと言って、「自分も一緒に歩く」という選択肢は全くなかった。
誰かがやっていることだからという理由で何かをするのは好きではないし、
自分の気持ちがそこになければやらないタイプ。
しかし、女心と秋の空。
「歩ける」と言われた瞬間に「歩こう」とすぐに心が決まった。
自分の気持ちがそこにはあったのだ!出会っていなかっただけで。
そんなこんなで出発する2年前の秋、お好み焼き屋で私の旅はスタートした。
特別に見たい景色があるわけでもなく、一緒に歩いて同じ思い出を作りたいというわけでもなく、ただ歩きたいな~という気持ちで旅に出ることを決めた。
どちらかと言うと自分への挑戦か。
登山経験もほとんど無いに等しい状態で軽々と、よくもまあそんな決断ができたものだと今になって思う。無知だったからこそ行動できることもあるのだろうか。
とにかくロングトレイル3000kmを歩くことになった。
全く想像がつかない旅だけど、ぼやけていた自分の進むべき道がはっきりと輪郭を表したような気がして、
こんなにわくわくすることが世の中にはあるのかと、そわそわしながらお好み焼きを食べた。
Te Araroa (テ・アラロア)の旅
数年前に歩いたニュージーランドのロングトレイル「Te Araroa(テ・アラロア)」。
この旅での出会いや出来事がなかったら今の自分はいったい何をしているだろう。
歩く前の自分がどんな人間だったか、何を考えていたか思い出せないぐらい
たくさんの経験をさせてもらった6か月間。
起きて、歩いて、食べて、寝る。
毎日シンプルな同じことの繰り返しの中に、こんなにも幸せが詰まっていること。
そして自分が自然、人、物など多くの支えの中で生きていること。
たくさんの大切なことに気づかせてもらい、
(嫌になるぐらい笑)自分と向き合うことができた時間。
そんな日々のできごとを振り返りながら書いていきたいと思います。
はたしてゴールまでたどり着けるのか!?
はじめに
今日からブログを始めることにしました。
日々歩くことや暮らすことを通して
見たもの、聞いたもの、食べたもの
色々な出来事をこのブログに綴っていこうと思います。
飽きっぽいのでいつまで続くか
興味のあることもよく変わるので
どんな内容のブログになるか未知です。道のブログだけに。
まずはずいぶん昔のことになってしまった、
ロングトレイルを歩いた時の記憶と記録を遡りながら、
そして日々の暮らしの中で実験していくことも書ていきたいな~
と思っています。
つらつらと気の向くままに~。
一昨日の夕食のメニューは思い出せないのに、
4年も前になる歩いていた日々のことは今でも鮮明に思い出せる不思議。
毎日の食卓もロングトレイルのように刺激的でありたい。